1983年の異世界

YouTubeサンライズチャンネルにて「聖戦士ダンバイン」が配信されることとなった。放送から40年というイベント的な理由もあるだろうけど素直にうれしい。
ここ数年、異世界転生モノが1ジャンルとして認知されている中、本作はそれらの元祖とも言われることもしばしばある。これについて「時代が早すぎた」という意見も見受けられるが、では現在、ダンバインのようなお話を作ることのできるアニメ作家はどれくらいいるのだろうか。しかも1年という長い期間、なおかつオリジナルで、だ。
それはさておき、ダンバイン1話を今改めて鑑賞すると、そのスピード感に驚かされる。主人公ショウ・ザマは現代(といってももう40年前か…)から異世界バイストン・ウェルに召喚される。その先で出会った地方領主ドレイクより聖戦士と呼ばれ、なし崩し的に手を結ぶこととなる。その後ドレイクの館の中で見せられたものはオーラバトラーと呼ばれる人型兵器であった…わけなのだが、ここで見たものは主役機ダンバインではなく汎用型オーラバトラーであるドラムロである。ここまででAパート。早い。
Bパートではドレイクに仕える騎士、バーン・バニングスの管理下、同じタイミングで召喚されは二人とともに、新型オーラバトラーダンバインのテストパイロットとして教育を受ける。この間、バイストン・ウェルについての説明などが入り、いよいよ試験飛行当日となる。ダンバインを用いた訓練飛行の最中、何処から来たオーラバトラーの襲撃を受ける三人。そのうちの一人、トカマクの乗るダンバインは直撃を受け撃墜、ショウもまた窮地に立たされるがなんとか撃退するも、謎のオーラバトラーパイロットが発した「ドレイクこそ悪」という言葉に心を乱され、1話が終わる。
こう書くと話の密度は普通ではないかと思うが、実際映像としてみるとかなりの高速展開だ。そもそも主人公ショウの情報が少なすぎるまま話が展開していく。最初のシーンでモトクロスレースをしている、というのはわかるが開始3分あたりでもうバイストン・ウェルに召喚され、そこで最初に出会ったバーンに殴りかかるが反撃を受けてしまいそのままのされてしまう。1話での彼の人となりがどうにもつかめないまま話は進むのだ。本作の監督である富野由悠季監督もこの展開に悔やんではいたものの、その後の全体的な話の展開を見直したと言われている(wikiソースなので真偽不明)。
とはいえ、1話の中で2体のオーラバトラー(実際はマーベルのダーナ・オシーもあるので3体)を画面に出し、どういうメカがどのように動くのかというパフォーマンスを見せた手腕は流石と言えるのではないだろうか。
もしこの1話を、現在、別の監督が再構成するとしたら、ショウというキャラクターを掘り下げるためにAパートを使い、Bパートからはバイストン・ウェルの世界観を紹介しつつ、最後にドラムロが動くところを見せ、ダンバインを1カット入れて終わり…という感じの作りになるのではないだろうか。
こちらの方がわかりやすさという点では良いが、巻き込まれ型ストーリーのスピード感は原典の方も良くできてると、個人的には思う。どっちの作り方に優劣があるというわけではない。

与太はここまでにして締めよう。
40年前の作品ではあるが、絵コンテや演出は今でも十分通用するものだとおじさん自身は思う(富野信者だからね…)。
小さなさざ波のように始まった物語が、現実世界をも巻き込む大きな渦になる過程を楽しもうじゃないか。

蛇足:あくまで個人的な意見であるという前提で…。ダンバインの持つテーマは後に作られる∀ガンダムやGレコにも含まれてる…はずである。理由はまたいつか。